イトーヨーカドーでは、「仕事の前始末」ということを強調しています。
後始末は、無益のコストを浪費し、前始末は利益を生む、という考えですね。
人間を育てるにも、同じ事が言えそうです。
人を育てる者は必ず読むべし、と言われている、「狼に育てられた子」、アマラとカマラという、実在の少女の話がありましたね。
残念ながら、後始末(言葉の不適切はご容赦ください)=手当てが遅すぎて、人間社会の行動様式に戻る事はできず夭折してしまいました。
前回は、「うつ病や引きこもりの増加に対応」というタイトルで、いわば事後の手当ての角度から、人間の成長について考えてみました。
胎児の段階、幼児の段階、三つ子の魂百まで、幼稚園では遅すぎる、孟母三遷、疾風怒濤の時代、等という言葉を取り上げました。
それらは、人間の「心」の形成に大きなな影響力を持っている。
どうやら、人間は遅くとも17・8歳くらいでで勝負は決まってしまっている、というような内容でした。
その意味では、20才以降は、修正しながら成長していく段階です。
母親や父親、環境によってインプットされた脳の配線を、より良く組替えていかなければならない段階だと言えるでしょう。
大学に入って、「なんだか自分は違うな」と感じ、社会人になって会社で叩かれ・教育される。定年退職の頃になって考える時間も多くなり、今までの自分は間違っていた、変わらなければ、と、高野山に登る、座禅を組む。臨終間際になって、パートナーに、「わがままばかりで済まなかった」と言う。
これらは、人間の営みが、継続する脳の配線の組換え作業でもある、という見方も出来そうです。
つまり、人生とは、他力で形成されたものの後始末をすることなんだ、と気付きます。
自分の置かれた環境は、配線をより良く組替えるための、無料の教材であり、格闘するも良し、馴染んでこれと戯れるも良し、自分に任せられています。
企業の教育担当者は、「わが社の企業内教育は、家庭教育の後始末を兼ねている」と公言する方も少なくありません。
特にサービス業で、親業の劣化現象に悩まされる企業が少なくありません。
人材派遣が増えたのは、このような背景があることも一因なのですね。
企業に、人を雇って給料を与えながら養成する余裕がなくなった、だから、出来上がった腕を雇うというわけですね。
そんな中で、企業風土の改善のためとはいえ、社員に教育投資をするアサヒビールの事例がありましたのでご紹介します。
アサヒビール
所属長研修を通じた企業風土の改善に成功
アサヒビールが外部機関を通じて3年前から毎年実施している全社員向けの「企業風土診断」の2007年の調査結果が明らかになった。2006年と2007年では社員の気持ちに前向きな変化があったことが分かった。社員個人の「活性度」の全社平均では「モチベーション」の項目が上がり、逆に「ストレス」の項目が減少した。それだけ社員が伸び伸びと仕事に打ち込めるようになったと判断できる。
今回の調査結果には、2006年から2007年にかけて実施した「所属長研修」の成果が表れたと同社は考えている。これは部長クラスを対象とし、部下とのコミュニケーションを改善することを図った研修。平均10人前後の部下を持つ約150人の所属長がコーチングのスキルを学んだり、メンタルヘルスへの理解を深めてきた。
企業の風土改革には、所属長を重点的に鍛える必要があるという認識で同社はこの研修を実施してきた。実際に、人事異動で所属長が代わった部署では企業風土診断の結果が変わる傾向があることからも、所属長の影響力がいかに大きいかが見て取れるという。
所属長研修のカリキュラムは、部下へのキャリア開発のアドバイス場面を学ぶなど、実践的な内容になっている。部下を育てるのが所属長の役目であることを繰り返し訴え、「部下育成の大切さを所属長の腹に落とし込む」(大野光男・人事部エグゼクティブプロデューサー)。様々な部署から集まった所属長同士が研修の場で部下への接し方について意見交換できることから、受講した所属長からも有意義な時間を過ごせると好評だったという。
(川又 英紀=日経情報ストラテジー)[2008/04/03]
親業には、コーチングの要素も含まれていると思いますね。
含まれているというより、コーチングそのものかも知れません。